2026/03/20
「明日こそはやろう」と決めたのに、今日も1日が終わってしまった。締め切り直前まで着手できず、最後はパニック。自分はダメな人間だ……。職場の「先延ばしグセ」でお悩みではありませんか? 「怠け」ではなく、脳の「実行機能」の弱さや、うつ、不安が影響しているかもしれません。
Gさんは大手小売業の本社で調達業務を担当していましたが、現在はうつ病で休職中です。7年前に店舗で副店長をしていた際、仕事を丸投げしてくる店長の下で働き、生活リズムが崩れ、人が怖くなり受診しました。異動後は本社出勤が週1回、その他は取引先を回る働き方になり、収入も安定し、メンタル不調の波もなくなってきていました。
しかし、5歳下の上司についた際、業務が間に合わないと『なんで〆切までにやらないの?』と責め立てられるようになりました。以前はやらなきゃ!と間に合っていたのに、いつの間にか「まぁいっか」と先延ばしするようになっていました。上司への恐怖心から2度目の休職に入り、人事からは復職に向けて自分に向き合う機会としてカウンセリングを勧められました。
Gさんは、「復帰すればまた上司とのコミュニケーションが怖くなる」と復職が難しいと感じており、対人関係のテーマを乗り切る方法を知りたいと願っています。
先延ばしは、「怠け」や「やる気不足」と誤解されがちですが、心理学的には、脳の「実行機能」という働きが弱い場合に起こりやすいことが分かっています。実行機能とは、目標を達成するために、自分の注意や行動、感情をコントロールし、計画を策定し、計画通りにタスクを進める、タスクや計画の進捗状況を定期的に見直し、振り返りをしながらタスクを遂行するという、いわば脳の司令塔のような役割です。
Gさんの場合、以下のような要因が複雑に絡み合っていました。
うつによる意欲低下: うつ病の影響で、以前はできていた「やらなきゃ!」という意欲自体が低下し、「まぁいっか」となりやすかった。
上司への恐怖・不安による回避: 上司から叱責されることへの強い不安が、その業務(締め切り)自体を想起することを避けさせ、結果的に先延ばしを助長していた。
失敗への恐怖: 先延ばしをする人は、完璧主義傾向がある場合が多く、「完璧にできないなら、始めない方がマシだ」という失敗への恐怖が先延ばしを引き起こすことがあります。
怠けではないと知ることは重要ですが、対策を立てなければ仕事は進みません。明日からできる対策をご紹介します。
「締め切り」を細分化する: 「〇〇を提出」という大きな目標ではなく、「今日は資料を3枚集める」「明日は構成を考える」など、今日やるべき小さなタスク(スモールステップ)を締め切りの数日前から設定します。
「最初の1歩」を極端に小さくする: 「レポートを書く」ではなく、「パソコンの電源を入れる」「レポートのファイルを新規作成する」など、30秒でできることから始めます。脳は、一度始めれば続けやすいという性質があります。
失敗しても良いと許す: 完璧を目指さず、まずは「60点の出来」で良いから締め切りを守ることを優先します。
Gさんのように、上司への恐怖心や、うつによる意欲低下が背景にある場合、一人で対策を実践することは困難です。当ルームのカウンセリングでは、実行機能の弱さへの対処法(環境調整、タスク管理術の工夫への助言など)を一緒に考えたり、認知行動療法(CBT)を用いて上司に対する過度な恐怖心を和らげたり、復職支援(リワーク)を行ったりします。
対人関係の問題や、背景にある実行機能の不全を乗り切る方法は、あなたを責めることではなく、あなたを守ることから始まります。まずは、プロの心理職に、その重いお気持ちを話してみませんか?
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