2026/07/30
「毎日モヤモヤとしていて、将来に希望が持てない」「やらなければいけないことを先延ばしにしてしまい、自己嫌悪に陥る」……。
発達特性や精神的な不調を抱えながら社会と繋がろうとする過程で、大きな壁にぶつかり、孤独感や焦燥感を覚える方は少なくありません。心療内科に通院し、就労に向けた訓練を頑張っていても、「根本的な生きづらさ」が拭いきれず苦しんでいる方へ向けて、当ルームにおける心理カウンセリングやアセスメントの活用法を、架空の事例を通してご紹介します。
Pさんは、中学校で不登校を経験し、高校卒業後に #パニック障害 と #自閉スペクトラム症 (ASD)の診断を受けました。
ご自身の特性と向き合いながら、20代後半からはIT企業に就職し、懸命に働いていました。しかし、業務量の増加や対人関係のプレッシャーから次第に体調を崩し、 #ストレスで休職、退職 に至りました。
現在は、再就職を目指して #就労支援移行事業所に通所中 であり、心療内科・精神科への通院と服薬も継続しています。しかし、事業所での訓練が思うように進まず、以下のような悩みを抱えて当ルームを訪れました。
#注意散漫・時間管理ができない ため、タスクが山積みになりパニックになりやすい。
#ソーシャルスキルの不足 から、事業所のスタッフや他の利用者と上手くコミュニケーションが取れず、浮いているように感じる。
相談できる相手もおらず #孤独孤立 を深めており、将来への希望が持てず鬱々としている。
とにかく、 #生きづらさを改善したい。
Pさんのように、複数の困難が絡み合っている場合、「何が原因でつまずいているのか」を紐解くことが第一歩となります。当ルームでは、主観的なお悩みをお聴きするだけでなく、必要に応じて客観的な指標となる心理検査(アセスメント)をご提案しています。
Pさんのケースでは、「先延ばし癖」や「時間管理の苦手さ」が、怠けや性格の問題ではなく、ASD特性に伴う「認知処理の偏り」から来ている可能性が高いと見立てました。
そこで、Pさんの同意を得た上で、現在の認知機能の得意・不得意(凸凹)を客観的に把握するために、知能検査を実施しました。その結果、視覚的な情報を素早く処理することや、複数の情報を頭の中に一時的に留めておくことに大きな負荷がかかりやすいことが可視化されました。
「だから私は、情報が多すぎると注意散漫になり、タスクを先延ばしにしてしまっていたのですね」と、客観的なデータに基づく自己理解は、Pさんの自己嫌悪を和らげる大きな転機となりました。
アセスメントによって「自分のトリセツ(取扱説明書)」のベースができた後、継続的なカウンセリングを通じて、以下のような心理支援を並行して行っていきました。
1. 特性に合わせた「実行機能」のサポート策
スケジュール管理の際、頭の中の情報処理量が多くなるとパニックを引き起こしやすいため、スマートフォンのリマインダーや視覚的なタイムスケジュール表を活用する具体的な工夫を一緒に考えました。事業所での訓練課題も「細かくスモールステップ化する」ことで、先延ばしや時間管理不良を防ぐ行動パターンの練習を行いました。
2. 対人スキルの向上と安全な振り返りの場
就労移行支援事業所で起きた「人間関係のモヤモヤ」をカウンセリングで報告していただき、心理士と一緒に「あの時、相手はどういう意図だったのか」「次はどう返答すればスムーズか」を振り返る(ソーシャルスキルトレーニング的アプローチ)場としていただきました。
3. 孤独孤立の解消と、感情のデトックス
Pさんにとって最も必要だったのは、「ありのままの不安や鬱々とした気持ちを、否定されずに聴いてもらえる安全な相談場所」でした。医療機関での短い診察時間や、就労に向けた実務的な訓練の場では吐き出しきれない「生きづらさ」を、カウンセリングという守られた空間で言葉にすることで、徐々に心のエネルギーが回復していきました。
約1年間の継続的なカウンセリングを経て、Pさんはご自身の特性を冷静にマネジメントできるようになり、事業所での訓練にも前向きに取り組める時間が増えていきました。パニック発作の予兆を感じた際にも、カウンセリングで身につけたマインドフルネスや呼吸法で、自ら対処できる場面が増えています。
「就労移行支援事業所」が社会復帰のための実践的なトレーニングの場であるならば、「心理カウンセリング」は、ご自身の内面と深く向き合い、傷ついた心を癒やして土台を固めるための場です。
将来への不安や孤独感に押しつぶされそうになった時は、一人で抱え込まず、当ルームにご相談ください。あなたの「生きづらさ」を少しずつ減らし、自分らしい再出発ができるよう、心理士が専門的な視点からしっかりと伴走いたします。
