さがみはらカウンセリングルーム

column

2026/10/17

「夫が亡くなってから、一日誰とも話さないことがあります」 ―悲嘆と孤独の中から少しずつ生活を取り戻すまで―

「主人が亡くなってから、何をするにも意味がないように感じます」

Cさんは60代の女性でした。

長年連れ添った配偶者を亡くしてから、一人暮らしになりました。

以前は友人と出かけ、趣味の教室にも通い、家庭では料理や庭仕事を楽しんでいました。

ところが配偶者の死後、

「二人分作っていた料理を、一人分だけ作る気になれない」

「出かけても、帰って話す相手がいない」

と感じるようになりました。

次第に趣味の集まりにも参加しなくなり、洗濯や片付けも後回しになります。

夜眠れず、朝になってから眠る日も増えました。

心療内科へ相談したところ、治療を継続しながら、

「定期的に気持ちを話せる場所を持ってみては」

と勧められ、カウンセリングを始めました。

「早く元気にならなければ」と急がない

最初の面談でCさんは、

「こんな話を何度もしても仕方ないですよね」

と言いました。

しかし、大切な人を失った悲しみには、それぞれの経過があります。

カウンセリングでは、無理に前向きになることを目標にはしませんでした。

夫との思い出。

最後の入院生活。

「もっと何かできたのでは」という後悔。

一人になった家に帰る寂しさ。

誰にも話せなかった気持ちを、少しずつ言葉にしていきました。

同時に、

「毎日きちんと生活しなければ」

ではなく、

「今日は着替える」

「近所を少し歩く」

「友人からの連絡に返信する」

など、ご自身にとって小さな行動から、少しずつ生活を取り戻していきました。

しばらくすると、以前通っていた趣味の教室仲間から誘いがありました。

最初は断っていましたが、

「見学だけでも」

と参加します。

Cさんは、

「久しぶりに、夫のこと以外の話をしました」

と笑いました。

悲しみがなくなったわけではありません。

命日が近づけば、今でも気分が落ち込みもします。

それでも、

「悲しいままでも、人と会って笑っていいんですね」

と思えるようになりました。

大切な人を失ったとき、

「時間が解決するまで一人で耐える」

必要はありません。

誰かに話すことも、悲しみとともにこれからを生きていくためのケアの一つです。