さがみはらカウンセリングルーム

column

2026/07/20

「仕事はできていたのに、家事や育児でミスばかり…」 ライフステージの変化で見えてくる発達特性と心理検査の活用

「学生時代も社会人になってからも大きな問題はなかったのに、結婚や出産を機に急に忘れ物やミスが増えた。」

「パートナーから『また忘れている』『どうしてできないの?』と言われ、自分でも情けなくなってしまう。」

このようなご相談も少なくありません。

実際には、学校や職場では目立たなかった発達特性(不注意傾向など)が、結婚・出産・育児といったライフステージの変化によって初めて「困りごと」として表面化するケースがあります。

以下に、実際の相談内容をもとに、個人が特定されないよう十分に加工・改変した架空事例をご紹介します。


【架空事例】仕事では困らなかったのに、家庭では失敗の連続…

30代のLさんは、二人のお子さんを育てながら育児休業中でした。

学生時代は友人も多く、学業やアルバイトでも大きなトラブルはありませんでした。就職後は総合職として勤務し、仕事の評価も高く、「責任感があり、丁寧な人」と周囲から信頼されていました。

しかし、結婚して家庭を持ち、子どもが生まれてから状況は大きく変わります。

例えば、

  • 鍵を閉め忘れる
  • 電源を切り忘れる
  • 子どもの予定や家族の約束を忘れてしまう
  • 複数の家事を同時に進めると途中で何をしていたか分からなくなる

といった出来事が増え、パートナーとの口論も次第に多くなっていきました。

「仕事はできていたのに、どうして家では何もできないのだろう。」

Lさんは自分を責め、自信を失っていました。


なぜ家庭生活で困りやすくなるのか

学校や会社は、

  • 時間割
  • 業務マニュアル
  • 上司や同僚からのフィードバック
  • 決まった役割

など、「構造化された環境」であることが多く、自分なりの工夫で困りごとを補いやすい側面があります。

一方、家事や育児は、

  • 子どもの急な体調不良
  • 泣き声への対応
  • 食事の準備
  • 家事
  • 予定管理

など、自分のペースや時間を確保しにくく、多くのことを同時並行で進める必要があります。

さらに睡眠不足や慢性的な疲労が加わることで、もともとの認知特性が目立ちやすくなることがあります。


心理検査で「得意」と「苦手」を客観的に理解する

Lさんには、カウンセリングに加え、心理検査を実施しました。

その結果、

  • 言葉で理解を進める力
  • 複数の情報を頭の中で整理する力
  • 速やかに作業を進める力

との間にばらつきがあり、それらが生活上の困りごとと関連していることが考えられました。

「認知特性と生活環境との組み合わせによって困りごとが生じやすい」ことを理解するための大切な手がかりになります。

Lさんも、「自分が怠けていたわけではなかったんですね。」と話され、抱えていた自己否定が和らいでいきました。


「頑張る」ではなく「仕組み」を変える

その後のカウンセリングでは、生活上での具体的な工夫を一緒に考えていきました。

例えば、

  • スマートロックやリマインダー機能の活用
  • チェックリストを見える場所に貼る
  • 家事を一人で抱え込まず役割分担を見直す
  • パートナーにも認知特性について理解してもらう
  • 一度に複数のことを抱えすぎない生活設計

などです。

また、ご夫婦で面接を行い、お互いの感じ方や得意・不得意を共有することで、「責める」のではなく「どのように一緒に工夫できるか」

という視点へ変化していきました。


一人で抱え込まず、まずは「知る」ことから

「以前は普通にできていたのに、最近うまくいかない。」

「育児が始まってから、自分に自信がなくなった。」

そんな背景には、生活環境の変化やストレス、認知特性が複雑に影響していることがあります。

さがみはらカウンセリングルームでは、臨床心理士・公認心理師によるカウンセリングと、必要に応じた心理検査を組み合わせながら、ご本人の特性や現在の困りごとを多面的に整理していくことができます。

心理検査は自分自身の得意なことや苦手なことを客観的に理解し、これからの生活をより安心して送るための「ご自身の取扱説明書」を作ることにもつながります。

「なぜできないのだろう」と自分を責め続ける前に、一度、ご自身の特性や生活環境を専門家と一緒に整理してみませんか。