さがみはらカウンセリングルーム

column

2026/07/30

「40歳から人生を立て直せるのだろうか」―ADHDとうつ病、離婚を経験した男性が再び歩き始めるまでー

Aさんは学生時代から「忘れ物が多い」「提出期限を守れない」「片付けが苦手」と言われ続けてきました。

しかし学力とITスキルが高く、そのまま大手IT企業へ就職します。

結婚し、住宅を購入。

子どもも誕生し、休日は公園へ出かけ、順風満帆な家庭生活を送っていました。

ところが会社での中堅となった頃から状況が少しずつ変わります。

仕事量が増え、複数案件を同時に抱えるようになると、

・優先順位が決められない

・締切を守れない

・メール返信を先延ばしする

・会議内容を整理できない

・仕事が山積みになり手が止まる

こうした状況が続き、周囲からの信頼を失っていきました。

家庭でも、

「何度言っても約束を忘れる」

「家事や育児を途中で投げ出してしまう」

「感情的になってしまう」

そんな出来事が重なり、夫婦関係は徐々に悪化していきます。

やがて心身の疲労から眠れなくなり、心療内科を受診。

うつ病と診断され、その後の診察でADHD(注意欠如・多動症)の特性も指摘されました。

その後、休職を経て退職。

数年後には離婚し、自宅も手放すことになりました。

子どもとも思うように会えなくなり、一人暮らしの部屋にこもる日が続きます。

「人生を全部失った」

そんな思いが頭を占めていました。


現在のAさんは、医療機関のリワークプログラムへ通所しています。

生活リズムを整えながら、障害者雇用やオープン就労での再就職を目指しています。

しかし40代での再就職は簡単ではありません。

IT業界もAI技術の進歩などで必要なスキルが大きく変化し、新たな知識や技術を学び直すリスキリングが求められています。

「若い人のように覚えられない。」

「今さら勉強しても意味があるのだろうか。」

そんな焦りや不安から学習が進まず、自信を失ってしまう方も少なくありません。


さがみはらカウンセリングルームでは、このような状況にある方に対し、医療機関での治療、リハビリテーションと並行して心理的支援を行っています。

まず大切なのは、「努力不足」と自分を批判・否定せず、自分自身の認知特性やストレス反応を客観的に理解することです。

必要に応じて、知能検査や特性に関する心理アセスメント、質問紙検査、性格検査なども活用し、得意なこと・苦手なこと・集中しやすい環境・疲れやすい状況を整理していきます。

心理検査は「診断をつけるため」だけに行うものではありません。

生活や仕事で困りやすい場面に対する、自分に合った働き方や支援方法を考えるための重要な手がかりになります。

カウンセリングでは、

・先延ばしへの具体的な対処法

・時間管理やタスク整理の工夫

・感情コントロール

・自己否定感の軽減

・喪失体験の整理

・対人コミュニケーションの練習

・再就職への不安や自己効力感の回復

など、一人ひとりの状況に合わせた支援を進めます。

さらに、医療機関のリワークプログラムや主治医、必要に応じて家族や支援機関とも連携しながら、無理のない復職・就職を目指していきます。


数か月後、Aさんはこう話してくれました。

「以前は『人生を失敗した』と思っていました。でも今は、『自分の特性を知らずに無理を続けていただけだった』と思えるようになりました。」

その後、リワークプログラムを終えての職業訓練、就労移行支援事業所で学び直したデジタルスキルを活かし、障害者雇用枠でIT関連業務に携わる仕事へ再就職が叶いました。

子どもとも少しずつ交流を再開し、自分のペースで新しい生活を築き始めています。

生きづらさの背景には、自分では気づいていない認知特性やストレスへの対処パターンが隠れていることも少なくありません。

もし、「頑張っているのにうまくいかない」「同じ失敗を繰り返してしまう」「将来への希望が持てない」と感じているのであれば、一人で抱え込まず、心理検査やカウンセリングを活用して自分自身を理解するところから始めてみませんか。

さがみはらカウンセリングルームでは、精神的な不調や生きづらさを抱える方に対し、医療機関と連携しながら心理アセスメントとカウンセリングを組み合わせた支援を行っています。自分らしい働き方や暮らし方を一緒に考え、気持ちの立て直しをサポートしています。