さがみはらカウンセリングルーム

column

2026/08/22

「仕事ができない」のではなく、「まだ仕事のやり方がつかめていない」だけかもしれません ― 新卒・若手社員がつまずいたときに考えたいこと ―

大学を卒業して、この春から社会人になったAさん。

希望していた会社に就職し、「早く仕事を覚えたい」と張り切っていました。

ところが、入社して数か月が経った頃から、少しずつ自信を失うようになりました。

窓口対応、電話、事務処理、顧客対応、上司への報告。

学生時代とは違い、職場では複数のことを同時に考えながら、自分で優先順位をつけて動くことが求められます。

Aさんは、一つひとつ指示された仕事には真面目に取り組める一方、

「何から手をつければよいのかわからなくなる」

「急に別の仕事を頼まれると、それまでやっていたことが抜けてしまう」

「周りは簡単そうにやっているのに、自分だけ遅い」

と感じることが増えていきました。

ある日、小さなミスをして上司から注意されました。

それ以来、

「また失敗したらどうしよう」

という不安が頭から離れません。

出勤前になると動悸がし、夜も仕事のことを考えてなかなか眠れなくなりました。

「向いていないから辞める」しかないのでしょうか

カウンセリングでは、まずAさんがどのような場面で困っているのかを整理しました。

すると、「能力が低い」というよりも、複数の情報を同時に扱うこと、急な予定変更、優先順位を自分で決めること、人と雑談しながら仕事を進めることなどに負担を感じやすいことが分かってきました。

一方で、決められた手順を守ることや、一つの事柄に対し丁寧に取り組むことは得意でした。

必要に応じて心理検査を利用すると、こうした本人の「得意・不得意」をより客観的に整理できることがあります。

重要なのは、心理検査で「できない人」という評価をすることではありません。

自分が力を発揮しやすい環境や仕事の進め方を考えるための材料として利用することです。

Aさんの場合も、

「口頭指示は聞くだけではなくメモを取る」

「仕事を一つずつ一覧化する」

「優先順位を上司と確認する」

「慣れるまで担当業務を段階的に増やす」

といった工夫を検討し、上司への相談の仕方を整理しました。

また、睡眠状態が悪化していたため、医療機関への受診についても話し合いました。

新卒1年目は「仕事ができるか」を判定する期間ではありません

新入社員は、社会人としての仕事の進め方そのものを学んでいる途中です。

学生時代まで問題なく生活できていても、就職すると突然、時間管理、同時処理、対人調整、自発的な判断など、多くの力が同時に求められるようになります。

そのため、社会人になって初めて自分の苦手な部分に気づく方もいます。

「みんなできているのに、自分だけできない」

そう考えてしまうと、自信を失い、緊張によってさらにミスが増え、

失敗する
↓
自信を失う
↓
緊張する
↓
集中できなくなる
↓
また失敗する

という悪循環に陥ることがあります。

若手社員を支えるご家族や職場の方へ

本人がつらそうなとき、すぐに「そんな会社なら辞めた方がいい」と結論を出す必要はありません。

もちろん、心身の状態によっては休職や転職が必要な場合もありますが、その一方で、仕事内容や指導方法、配置、業務量などを少し調整することで、本来持っている力を発揮できるようになるケースもあります。

「本人の努力」だけでなく、「本人と環境の相性」を考えることが重要です。

「辞めるか、我慢するか」の二択になる前に

仕事の悩みを抱えている若い方の中には、

「この程度で相談していいのだろうか」

「社会人なら我慢するべきだ」

と考えて、限界まで頑張ってしまう方がいます。

しかし、眠れない、食欲がない、涙が出る、出勤前に動悸がする、休日も仕事のことばかり考えてしまう、といった状態は、早めに立ち止まって状況を整理した方がよいサインです。

さがみはらカウンセリングルームでは、新卒・若手社員の職場適応、仕事上のミスや自信低下、対人関係、発達特性への不安などについてもご相談をお受けしています。

必要に応じて心理検査なども活用しながら、「何が苦手なのか」だけではなく、「何ができるか」「どんな環境で力を発揮しやすいか」を一緒に考えていきます。

仕事を辞めると決める前に、一度、自分の状況を整理してみる。

それも、これから長く働いていくための大切な選択肢です。