2026/09/21
「仕事を覚えられないまま、どんどん業務が増えていきます」
「治療も続けたい。でも、このままでは仕事を辞めるしかないのでしょうか」
Aさんは30代の会社員。結婚を機に転職し、経験を活かせる職場へ中途採用されました。
ところが入職は年度途中。新入社員向け研修はすでに終了し、決まった教育担当者もいませんでした。
周囲からは「分からなければ聞いてね」と言われるものの、皆忙しそうで声をかけにくい。仕事を覚える前から担当業務が増え、昼休みも十分に取れない日が続きました。
さらにAさんは婦人科系の治療を継続しており、将来は子どもを持ちたいという希望もありました。
通院日を確保することへの申し訳なさ。
治療による身体的な負担。
新しい職場への緊張。
いくつものストレスが重なり、次第に眠れない、食欲がない、涙が出るといった状態になっていきました。
「せっかく転職したのだから頑張らなければ」
そう思うほど、Aさんは追い詰められていきました。
Aさんが相談につながったきっかけは、勤務先の福利厚生として案内されていた従業員支援プログラム(EAP)でした。
「カウンセリングは高そう」「こんなことで相談していいのかな」という迷いがありましたが、会社の制度を利用することで自己負担が少なく、外部の相談室へ直接相談できることが背中を押しました。
カウンセリングでは、まず仕事、体調、治療、家庭生活を一つずつ整理しました。
するとAさんは、
「中途採用だから、すぐできなければいけない」
「通院で迷惑をかけてはいけない」
と、自分に対して厳しい基準を課していることに気づきました。
一方で、別の要因もありました。
ほぼ引き継ぎがない。
質問する相手が決まっていない。
業務を覚える前に仕事が増えている。
こうした環境側の要因も大きかったのです。
Aさんはカウンセリングで話をした内容をもとに、夫にも相談できるようになっていきました。
夫は、
「辞めてもいいと思っていた。でも、本当は仕事を続けたいと思っているなら支えたい」
と考えていたことがわかりました。
家庭では通院日の家事の分担を変更し、Aさんが休息をとれる時間を作っていきました。
2026年度から、「治療と就業の両立支援」は事業主の努力義務となっています。
治療が必要だからといって、「働けない」「退職するしかない」と結論付けるのではなく、本人・職場・医療機関等が必要な情報を共有し、働き方を検討することが大切です。
Aさんも、状態が少し落ち着いた段階でカウンセリングで相談方法を整理し、人事部門へ状況を伝え相談することにしました。
その結果、職場では教育担当者を明確にし、業務の習得状況を定期的に確認することになりました。
通院についても、必要な範囲で本人の情報を共有し、勤務時間や業務予定を調整することになりました。
数か月後、Aさんは、
「自分には仕事ができない、向いていないと思っていました。でも、仕事を覚えるための時間ができて、相談できるようになって、これからも働いていけそうです」
と話しました。
治療を続けながら仕事にも徐々に慣れ、今では無理のないペースで勤務を続けています。
カウンセリングでは、中途採用後の職場適応、仕事と治療との両立、ワークライフバランス、業務負担や人間関係に悩む方に対し、現在のストレスや働き方を整理し、必要に応じてご家族、医療機関、職場等と連携を考えながら、心身の安定と就労継続をサポートすることができます。
「辞めるしかない」と決める前に、できることが残っていないか、一緒に整理してみませんか。
治療を続けながら働くことや、自分らしいキャリアを見直すことなど、その人に合った方法を探していくことができます。
