さがみはらカウンセリングルーム

column

2026/09/26

「自分は社会人に向いていないのかも」 ―新卒1年目のつまずきを乗り越えるまで―

「何度も同じようなミスをしてしまいます」

「周りは普通にできているのに、自分だけ仕事ができません」

Aさんは、大学を卒業して就職した20代の若手社員でした。

希望していた会社に入り、意欲的に働いていました。

しかし、入社して半年が過ぎ、一人で担当する仕事が増えた頃から状況が変わります。

電話や窓口対応、事務処理、上司への報告。複数の仕事が重なると、何から手をつければよいのか分からなくなることがありました。

職場には年上の先輩が多く、

「こんなことを質問したら、できない人だと思われるのでは」

と考え、分からないことも聞けません。

ミスをすると一日中そのことを考え、

「また失敗するかもしれない」

という緊張から、さらに集中できなくなる悪循環に陥りました。

やがて帰宅しても仕事が頭から離れず、夜中に目が覚めるようになりました。

家族から見ても「いつもの様子ではない」

休日も表情が暗くなったAさんを心配した家族は、

「一人で抱え込まず、誰かに相談してみたら」

と勧めました。

Aさんは家族と一緒に、カウンセリングルームを訪れました。

最初は、

「話しても、仕事そのものは変わらないのでは?」

と思っていました。

カウンセリングでは、単に気持ちを聞くだけではなく、

「どんな仕事で困るのか」

「誰になら相談できそうか」

「上司には何を分かってもらいたいのか」

を具体的に整理していきました。

するとAさん自身も、

「仕事そのものが嫌なのではなく、分からないまま一人で進めることが一番つらかった」

と気づきました。

職場との橋渡しへ

カウンセリングを続ける中で、Aさんは、

「できれば会社は辞めたくない」

という気持ちをはっきり言えるようになりました。

そこでAさんは、上司へ相談することを検討しはじめました。

カウンセラーと一緒に、

「何に困っているのか」

「どのような支援があれば働きやすいのか」

を整理したうえで、Aさん自身の言葉で職場へ伝えました。

その結果、上司や人事部門も、

「教育や相談体制が本人に十分合っていなかった可能性がある」

と理解するようになりました。

指導担当者を明確にする。

定期的に困りごとを確認する。

業務を一度に増やさず、習得状況を見ながら任せる。

そして最終的には、本人の人となりや強みをより活かせる部署への配置も検討されました。

新しい職場で「もう一度やってみたい」

環境が変わったからといって、すぐに不安がなくなったわけではありません。

しかし、新しい職場では

「分からなかったら、ここで確認しよう」

「今日はここまで覚えれば大丈夫」

と周囲から具体的な声をかけてもらえるようになりました。

Aさん自身も、

「分からないことを聞くことは、恥ずかしいことではない」

と考えられるようになりました。

やがて、

「以前は朝になるのが怖かったけれど、今はもっと仕事を覚えていきたいと思えます」

と話すようになりました。

若手の職場適応は、本人だけの問題ではありません

新卒・若手社員が仕事につまずいたとき、

「本人の努力不足」

「社会人としての経験不足」

だけで考えてしまうと、必要な支援を見逃すことがあります。

仕事を教える人が明確か。

質問できる雰囲気があるか。

独り立ちを急ぎすぎていないか。

本人の得意・不得意と仕事内容が合っているか。

こうした環境を整えることで、離職せず本来の力を発揮できる場合があります。

カウンセリングでは、新卒・若手社員の職場不適応、仕事上のミスや自信低下、人間関係、休職・退職への迷いなどを抱える方に対し、困りごとやストレスを整理し、職場でどのような支援や環境調整があれば働きやすくなるのかを一緒に考えていくことができます。

本人、家族、職場、心理職がそれぞれの立場から支えることで、若い社員がもう一度、自信を持って働き始められることがあります。