さがみはらカウンセリングルーム

column

2026/09/28

「頑張る自分」が止まれなくなった ―20代若手社員が休職をきっかけに、働き方を見直すまで―

「仕事は好きでした。むしろ、もっと頑張れると思っていました」

そう話したAさんは、20代の会社員です。

学生時代から真面目で、目標が決まると人一倍努力するタイプでした。希望していた企業に就職すると、仕事の覚えも早く、上司や先輩から期待されることが大きな励みになりました。

入社1年目の後半には担当業務も増え、自分から

「やります」

と積極的に仕事を引き受けるようになります。

残業が続いても苦にならず、睡眠時間を削って働くこともありました。周囲には、

「来年はもっと成果を出したいです」

と明るく話していました。

しかし、その一方で食生活は乱れ、休息も少なくなっていました。

2年目になると難しい案件が増え、トラブルへの対応なども重なりました。

相談相手だった先輩も忙しくなり、Aさんは次第に仕事を一人で抱えるようになりました。

疲れているはずなのに、仕事になると集中しすぎる。

帰宅後は緊張をほぐすため飲酒することが増える。

朝起きられず遅刻することも出てきました。

そしてある出来事をきっかけに生活の乱れが表面化し、職場から医療機関への受診を勧められました。

診察では一定期間仕事を離れて休養することが必要と判断され、Aさんは休職することになりました。

「休んだらキャリアが終わる」という不安

休職直後のAさんは、

「会社から信用されなくなったのではないか」

「同期に追い越される」

「もう以前のようには働けないのではないか」

と強い不安を抱えていました。

カウンセリングでは、まず治療や休養を優先しながら、少しずつこれまでの働き方を振り返りました。

するとAさんには、

「調子が良いと感じると予定を詰め込みすぎる」

「疲れていても目標があると止まれない」

「人から評価されると、さらに頑張ろうとする」

という特徴があることが分かってきました。

一方、疲労や睡眠不足、気分の変化には気づきにくく、限界を超えてから初めて不調を自覚する傾向もありました。

自分を「客観視」する

必要に応じて心理検査なども活用し、考え方やストレス反応、仕事への取り組み方を整理しました。

また、

  • 睡眠時間
  • 疲労感
  • 気分の変化
  • 活動量
  • 飲酒
  • 仕事への意欲

などを記録することで、自分の状態を客観的に振り返る練習も行いました。

大切なのは、「気分が高い=調子が良い」と単純に判断しないことです。

睡眠が減っているのに活動量が増えている、話す量が急に増える、予定を次々と入れるなど、本人にとっての「いつもと違う変化」を知ることがセルフケアにつながります。

Aさんは、医学的な診断や服薬調整については主治医と相談し、カウンセリングでは、日常生活や仕事の中での出来事や変化をどう捉え、どう対処するかを一緒に考えていきました。

復職は「以前の自分に戻ること」ではない

休養後、Aさんはリワークなども利用しながら、生活リズムと体力を少しずつ整えていきました。

復職に向けて設定した目標は、

「また以前のように全力で働く」

ことではありませんでした。

困ったときには早めに相談する。

残業を続けない。

睡眠を削って成果を求めない。

調子が良い時ほど予定を詰め込みすぎない。

飲酒をストレス解消の中心にしない。

こうした新しい働き方を身につけることでした。

Aさんは後に、

「頑張れることが自分の長所だと思っていました。でも、頑張り続けないことも仕事を続けるための力なんですね」

と話しました。

長く働くためには「止まる力」も必要です

「以前のように働けなくなった」と考えるのではなく、これから長く働くために、今までとは少し違う働き方を身につける。

休職は、そのために自分自身を見直す大切な時間になることがあります。

カウンセリングでも、様々なサポートが可能です。

医療機関で治療中の方については主治医の治療方針を大切にしながら、自分のストレスサインや気分の変化を理解する、再発予防、セルフケア、無理のない職場復帰、その後の安定した就労継続などを目指していくことができます。