2026/07/30
Dさんは、同棲中のパートナーであるEさんとの関係に悩んでいました。
「Eさんのことは大切だし、いがみ合っているわけではないんです。でも、些細なことでカッとなって、つい強い言葉で彼を責めてしまいます」
例えば、Eさんが帰宅後、靴を揃えずに脱ぎっぱなしにしていた時。Dさんの頭には「またか」という思いと共に、「私は彼に大切にされていない、私の言うことは否定されている」という感情が瞬時に湧き上がります。そして、「どうしていつもそうなの!」と、必要以上に強い口調で怒りをぶつけてしまいます。
その場はEさんが謝るか、沈黙することで収まりますが、Dさんはその後、激しい自己嫌悪に襲われます。 「なんであんな言い方しかできないんだろう。でも、あの瞬間はコントロールできないんです……」
Dさんの「怒り」のスイッチは、どこで入るのでしょうか。カウンセリングでの話し合いを通じて、Dさんは自分自身のパターンに気づき始めました。
「Eさんが私の発言を否定したと感じたり、会話にズレが生じたりした時、自分がパニックになっていることに気づきました。どうすればいいか分からず、自分を守ろうとして、防御反応として『怒り』が出てしまうみたいです」
Dさんには、幼少期から対人緊張や対人不安がありました。大人になった今も、人前で話すことへのストレスを日頃から感じています。また、昔から他者との会話で、考えや気持ちを「察する」ことが難しく、それがズレが起こる原因のひとつかもしれない、と思っていました。発達障害の傾向が強いのではないか、と自分で調べたこともあります。
Dさんのように、ご自身の「特性」と、パートナーへの「怒り」が絡み合っている場合、単なる「怒りのコントロール(アンガーマネジメント)」だけでは解決しにくいことがあります。このような場合、アセスメント(心理検査・評価)と心理支援を組み合わせ、自己理解を深めることから始めます。
まず、Dさんの自責思考を減らし、客観的にご自分を見るために、アセスメントをご提案しました。
社交不安の影響: あがりなどの社交不安症(人前で話すことへの恐怖)や、日頃のストレス状態を評価します。必要に応じて、医療機関との連携も考慮します。
認知特性・性格傾向の評価: 知能検査や性格検査などの心理検査を用い、得意・不得意の凸凹を「見える化」したり、発達特性に伴う「場面を理解して察する」難しさや、言葉を文字通りに受け取りやすい傾向を確認します。
アセスメントの結果、「脳の特性」によって会話時にパニックが起こりやすく、その防御として怒りが出ていたことが客観的に裏付けられました。Dさんは、「私が悪いわけじゃなかった」と、初めて自分を許すことができたと言います。
自己理解が深まった段階で、穏やかに意思疎通するための具体的なスキルを学びます。
社交不安へのアプローチ: 社交不安症状を隠そうとするストレスも、パニックの一因でした。それらを隠さずに話す練習や、パートナーに不安やストレスを言葉で伝える練習をします。
コミュニケーションスキル(アサーション): 「察する」ことを目指すと、言葉でのコミュニケーションが不足しがちになります。それよりも、必要な情報を穏やかに、かつ具体的に伝える方法を身に着けます。例えば、「(服が脱ぎっぱなしである理由を)察して怒る」のではなく、「私は、靴が揃っていると気持ちが安定するから、揃えてくれると嬉しい」と「Iメッセージ」で伝える練習などです。
怒りのコントロール: パニックの予兆(鼓動が速くなる、頭が真っ白になる)を感じたら、その場から離れる(タイムアウト)習慣や、トリガー(「否定された」感)を特定し、別の解釈を考える練習を行います。
カウンセリングを通じて、Dさんは自分自身の特性を理解し、Eさんに社交不安のストレスや、言葉通りに受け取りやすい癖を共有することができました。EさんもDさんの特性を知ることで理解が深まり、より言葉で説明して明確に伝えるなど協力的になりました。
「まだカッとなることはありますが、その後すぐにタイムアウトを取ったり、『今はパニックだから後で話そう』と言えたりするようになりました。ズレが減り、前より穏やかに過ごせています」
さがみはらカウンセリングルームは、特性理解に基づいた具体的な「伴走」をします。一人で悩まず、一歩を踏み出してみませんか。あなたらしい対処法を見つけるお手伝いをします。
