さがみはらカウンセリングルーム

column

2026/08/22

50代、「今さら新しい仕事なんて覚えられない」と感じたら ― ベテラン社員の異動・役職定年・キャリア後半の心理 ―

Dさんは50代。

長年、同じ専門分野で仕事を続けてきました。

知識も経験も豊富で、若い職員から相談されることも多くありました。

自分では、

「次はもう一段上の役職になるかもしれない」

と考えていました。

ところが人事異動で告げられたのは、昇進ではなく、全く経験のない部署への配置転換でした。

新しい職場では、これまで当たり前にできていたことが通用しません。

若い職員に、

「これはどうやるのですか」

と聞かなければ仕事が進まない。

会議で使われる言葉も分からない。

パソコン上の新しいシステムにもなかなか慣れない。

家に帰ると、

「もう年なのかな」

「自分は会社から必要とされていないのではないか」

と考えるようになりました。

本当に「覚えられなくなった」のでしょうか

カウンセリングで話しているうち、Dさんからこんな言葉が出ました。

「覚えられないというより、覚えたいと思えていないのかもしれません」

Dさんがつらかったのは、仕事内容だけではありませんでした。

期待していた昇進がなかったこと。

長年築いてきた専門性が評価されなかったように感じたこと。

「なぜ自分がこの部署なのか」という納得できない気持ち。

そうした感情が、仕事への意欲を低下させていました。

50代の仕事の悩みには「これまでの人生」が関係している

若手社員の異動と、50代の異動では意味合いが違います。

50代になると、

「自分は会社で何をしてきたのか」

「あと何年働くのか」

「役職定年後はどうなるのか」

「定年後は何をするのか」

など、キャリアだけではなく人生そのものについて考える時期に入ります。

健康問題や親の介護、子どもの独立、夫婦関係の変化などが重なることもあります。

仕事上の小さな出来事が、これまで抑えていた将来への不安を一気に表面化させることもあります。

ベテランだからこそ「できない」と言えない

長年仕事をしてきた人には、

「これくらいできて当然」

という周囲からの期待があります。

本人自身にもあります。

そのため、新しい仕事が分からなくても質問できない。

若い人に聞くことを恥ずかしく感じる。

分からないまま抱え込み、さらに仕事が遅れる。

そして、

「昔の自分ならこんなことはなかった」

と落ち込んでしまいます。

しかし、30年間積み上げてきた経験が、一度の異動でなくなるわけではありません。

必要なのは、これまでの経験を捨てることではなく、新しい環境でどう活かせるかを考えることです。

キャリア後半を「下り坂」にしないために

カウンセリングでは、不安や不満をなくすことだけを目指すわけではありません。

「これから何を大切にして働きたいのか」

「どの程度まで責任を担いたいのか」

「仕事以外にどんな人生を送りたいのか」

を振り返る時間にもなります。

さがみはらカウンセリングルームでは、中高年・ベテラン社員の異動、昇進、役職定年、定年への不安、職場での居場所、自分のキャリアへの迷いについてのご相談もお受けしています。

人生100年時代と言われるなか、50代は「もう遅い」年代ではありません。

これまでの働き方を振り返り、これからの働き方を組み立て直す時期でもあります。

「会社でこれからどう働くか」

だけではなく、

「これから自分はどう生きたいか」。

一度、ゆっくり考えてみませんか。