さがみはらカウンセリングルーム

column

2026/08/23

「パートナーのメンタル不調を支えるのに疲れた」――支える側もカウンセリングを受けていい

「妻(夫)が落ち込んでいると、自分まで苦しくなる」

「毎晩話を聞いているけれど、何を言えばいいのか分からない」

「仕事中もパートナーのことが心配で集中できない」

大切な人が精神的につらい状態にあると、「自分が支えなければ」と考える方は少なくありません。

しかし、その状態が数か月、数年と続けば、支える側にも疲労が蓄積します。

今回は、パートナーを支え続けるうちに自分自身も疲弊してしまった方をご紹介します。

【架空事例】「自分が支えなければ」と頑張り続けたAさん

40代の会社員Aさんは、パートナーと二人で暮らしていました。

パートナーはもともと心配性で繊細なところがありましたが、仕事や対人関係で傷つく出来事が重なり、次第に自信を失っていきました。

辛かった出来事を思い出し、泣き出してしまったり、感情が昂り、Aさんに強い言葉をぶつけることもありました。

Aさんは毎日のように話を聞きました。

しかし、励ますと、

「気持ちを分かってくれない」

解決策を提案すると、

「そんな簡単な問題じゃない」

何も言わず聞いていると、

「どうして何も言ってくれないの?」

と言われることがありました。

次第にAさんは、

「何をしても間違いになる」

と感じるようになりました。

「自分が原因なのでは」という罪悪感

さらにAさんを苦しめていたのが、罪悪感でした。

パートナーはAさんの助言により仕事を辞めましたが、家にいる時間はずっと考え込み、辛く苦しそうな様子が続いていました。

そのため、

「自分が退職を勧めなければ、こんなにつらい思いをしなかったのではないか」「外に出られていたほうがパートナーにとって良かったのではないか」

と自分を責めるようになったのです。

パートナーから「消えてしまいたい」と打ち明けられたときには、大きな衝撃を受けました。

それ以降、パートナーと離れた場所にいると、

「今、大丈夫だろうか」

と気になります。

仕事中にもスマートフォンを何度も確認する。

帰宅すると、まずパートナーの表情を見る。

機嫌が悪そうなら、

「今日は何かあったのだろうか」「どう言葉をかければいいのだろう」

と緊張する。

いつの間にか、Aさん自身の生活もパートナーの状態を中心に回るようになっていました。

カウンセリングで見えてきた「支える」と「抱え込む」の違い

Aさんがカウンセリングを受けに来室した当初、

「相談したいのは自分のことではなく、パートナーへの接し方です」

と話していました。

しかし面接を重ねると、Aさんは自分自身もかなり疲れていること目が向きました。

眠りが浅い。

仕事に集中できない。

趣味を楽しむと罪悪感を覚える。

友人と会うことも減っている。

そして、

「自分がパートナーを何とかしなければならない」

という強い責任感を抱えていました。

そこでカウンセリングでは、パートナーへの対応だけでなく、

「どこまでがAさんにできることで、どこからはAさんが抱え込まないほうが良いことか」

を整理していきました。

相手を大切にすることと、相手の感情や人生すべてに責任を負うことは同じではありません。

この区別は、Aさんにとって大きなテーマになりました。

「夫婦だから全部受け止める」から、距離の適切な調整へ

Aさんは少しずつ、関わり方を変えていきました。

パートナーが辛そうだからといって、毎回すぐに自分が解決しようとしない。

話を聞くときも、自分に余裕がなければ「今は難しいから、落ち着いてから話したい」と伝える。

夫婦だけで抱えきれない問題については、適切な相談先や支援につながることも検討する。

そしてAさん自身も、自分の仕事、睡眠、友人関係、趣味などの時間を少しずつ取り戻していきました。

必要に応じて夫婦で相談する機会も設け、

「どんなときに二人が苦しくなるのか」

「困ったとき、どんな助け方ならお互いに受け入れやすいのか」

「どのような言葉がお互いを傷つけるのか」

を整理していきました。

パートナー側も次第に、

「あなたには全部分かってもらわなければ」

という状態から、

「自分自身にしかできないことがある」「自分が自分の一番の味方になる」

と考えられるようになっていきました。

支える人にも「支えてもらう場所」が必要です

Aさんは、

「パートナーの調子が悪いと、自分が何とかしなければと思っていました。でも今は、そばにいることと、全部背負うことは違うと思えるようになりました」

と話しました。

パートナーの悩みがすべてなくなったわけではありません。

夫婦の間ですれ違う日もあります。

それでも、一人が崩れるともう一人が背負い、ともすると一緒に崩れてしまう関係から、それぞれが自分自身を保ちながら支え合う関係へ、少しずつ変わっていきました。

パートナー本人が相談に来なくても構いません

家族やパートナーのメンタル不調について、

「本人がカウンセリングを嫌がっているから相談できない」

と思われる方もいらっしゃいます。

しかし、最初に支える側の方が相談することにも意味があります。

「どう接したらよいのか」

「自分まで疲れてしまった」

「夫婦関係が壊れそうで怖い」

「家に帰ることがつらくなっている」

こうした悩みも、十分にカウンセリングのテーマになります。

さがみはらカウンセリングルームでは、パートナーやご家族のメンタル不調を支える中で、ご自身も疲れや不安、罪悪感、夫婦関係の悪化、仕事への影響などに悩んでいる方からのご相談をお受けしています。

カウンセリングを通して、現在起きていることやご自身の気持ちを整理し、相手との適切な距離やコミュニケーション、家族としてできることと一人で背負わなくてよいことを一緒に考えていきます。状況によっては、お一人での相談から始め、その後、夫婦・カップルでの相談を検討することもできます。

大切な人を支えるために、まず支える人自身の生活と心を守ることも大切です。

「相手の問題だから、自分が相談しても仕方がない」と考えず、支える側のためのカウンセリングとしても、どうぞご活用ください。