さがみはらカウンセリングルーム

column

2026/09/30

「仕事ができない」のではなく、「合わない働き方」だった ―20代若手社員が心理検査を通して自分に合う仕事を見つけるまで―

「周りは普通にできているのに、自分だけ仕事が遅いんです」

「作業中に別の仕事を頼まれると、頭が真っ白になります」

Aさんは20代の若手会社員でした。

学生時代は真面目で、授業や試験にもきちんと取り組んできました。一方、アルバイトやサークル、ボランティア、インターンなどの経験はほとんどありませんでした。

ゼミでも積極的に議論するより、先生から指示された課題を着実にこなすタイプでした。

就職活動も自分から多くの企業を比較したというより、周囲に勧められた会社を中心に受け、そのまま就職しました。

ところが社会人になると、学生時代とは違う難しさに直面します。

電話対応をしながら書類を処理する。

急な依頼に対応しながら、それまでの仕事も忘れない。

顧客と雑談をしながら関係を築く。

分からないことを自分から質問する。

先輩の様子を見ながら「今、何をすべきか」を考える。

Aさんにとって、こうした複数のことを同時に処理することや、自発的に人と関わり続けることは大きな負担でした。

ミスが続くと、

「自分には能力がないのでは」

と自信を失い、出勤前に動悸がしたり、夜眠れなくなったりするようになりました。

心理検査で「苦手さ」を客観的に整理する

Aさんは、カウンセリングを受けることにしました。

カウンセリングでは、現在の仕事だけでなく、学生時代の人間関係、生活経験、これまで得意だったこと・苦手だったことも丁寧に振り返りました。

カウンセラーと相談のうえ、心理検査も受けることにしました。

心理検査は、単純に「能力が高い・低い」と判定するものではありません。

Aさんの場合も、

「一つのことに集中し、決められた手順を正確に進めることは得意」

「一方で、複数の情報を素早く切り替えたり、曖昧な状況から自分で判断して動いたりする場面では負荷が高まりやすい」

といった特徴がわかりました。

Aさんは、

「できないことばかりだと思っていました。でも、得意なやり方と苦手なやり方があるんですね」

と話しました。

「努力して克服する」だけが答えではない

カウンセリングでは、

どのくらいの対人関係なら負担が少ないか。

どのくらいの時間ではあれば集中して作業できるか。

自分なりの考えで仕事を進められる職場と、手順が明確な職場ではどちらが合うか。

口頭指示と文章での指示ではどちらが理解しやすいか。

こうした点を一つずつ整理しました。

その結果、Aさんは現在の仕事を続けることだけにこだわらず、転職も選択肢として考えるようになりました。

就職活動では、以前のように「採用してくれる会社」を探すのではなく、

「自分が安定して力を発揮できる環境はどこか」

という視点で企業を選びました。

最終的に、業務手順が比較的明確で、一つの作業に集中しやすく、対人折衝が多くない職場へ転職しました。

転職後、仕事だけでなく生活にも余裕が生まれた

新しい職場でも、最初からすべてが順調だったわけではありません。

それでもAさんは、自分が疲れやすい場面を以前より早く把握できるようになりました。

困ったときには、

「優先順位を確認したいです」

「一度整理してから取りかかります」

と報告・相談することもできるようになりました。

仕事で消耗し切らなくなったことで、休日には趣味を楽しみ、友人と出かける余裕も生まれました。

Aさんは、

「前は仕事に自分を合わせることしか考えていませんでした。でも今は、自分に合う働き方を選んでもいいと思えます」

と話すようになりました。

自分に合う仕事を考えるために

大切なのは、苦手なことを克服して「どんな職場でも働ける人」になることではありません。

自分の特性を知り、自分が力を発揮しやすい環境を選ぶことも、長く働き続けるための大切な力です。

「仕事ができない」と自分を責める前に。

一度、自分自身の“働き方の取扱説明書”を整理してみませんか。